- 2026年10月14日
- 2026年10月13日
「聞こえていないかも」と感じたら|子どもの滲出性中耳炎は痛みが出ないことがあります
呼んでも振り向かない、テレビの音が大きい——そんなときに
「名前を呼んでも反応しないことがある」「テレビの音量がだんだん大きくなっている」「聞き返しが増えた気がする」。お子さまのこうした様子に気づいても、本人が痛がっていないと、受診してよいものか迷われるのではないでしょうか。
耳の病気というと、夜中に激しく泣くほど痛がる急性中耳炎を思い浮かべる方が多いと思います。しかし、耳の中に液体がたまっていても、痛みも熱もほとんど出ない中耳炎があります。それが滲出性中耳炎です。
痛みがないぶん見つかりにくく、聞こえにくいまま過ごしてしまうことがあります。この記事では、滲出性中耳炎とはどのような状態か、家庭で気づくためのサイン、耳鼻咽喉科で何を調べるのかを解説します。

滲出性中耳炎とは、どのような状態ですか?
鼓膜の奥にある「中耳」という空間に、液体(滲出液)がたまった状態を滲出性中耳炎といいます。
中耳は、耳管という細い管で鼻の奥とつながっています。この耳管には、中耳の空気を入れ替えて圧を調整するはたらきがあります。耳管のはたらきが悪くなると中耳の換気がうまくいかず、液体がたまってきます。
液体が鼓膜の振動を妨げるため、音が伝わりにくくなります。急性中耳炎のような強い炎症を伴わないことが多く、痛みや発熱がほとんど出ないのが特徴です。
なぜ子どもに多いのですか?
お子さまの耳管は、大人に比べて短く、太く、水平に近いという特徴があります。そのため鼻の奥の状態が中耳に影響しやすく、換気の調節も未熟です。
また、次のような状態が背景にあることがあります。
- かぜや急性中耳炎のあと
- アレルギー性鼻炎や副鼻腔炎で鼻づまりが続いている
- アデノイド(鼻の奥のリンパ組織)が大きい
鼻の状態と耳の状態は、耳管を通じてつながっています。鼻が続けて詰まっているお子さまでは、耳のほうにも影響が出ることがあります。
家庭で気づくサインはありますか?
お子さまは「聞こえにくい」と自分から訴えないことが多いため、周囲が気づくことが大切になります。次のような様子が続く場合は、確認しておくとよいでしょう。
- 呼びかけへの反応が鈍い、聞き返しが増えた
- テレビやタブレットの音量が以前より大きい
- 耳を気にして触る、押さえる
- 呼んでいるのに気づかず、うしろから触ると驚く
- 言葉の発達がゆっくりに感じる
- 口を開けて寝ている、いびきをかく(鼻づまりのサイン)
- かぜをひいたあと、しばらく機嫌が優れない
学校や園の検診で指摘された場合
耳鼻科検診で「受診のお知らせ」を受け取った場合、滲出性中耳炎が見つかることがあります。症状がなくても、そのままにせず一度確認してください。検診は短時間で行うスクリーニングのため、詳しく調べる必要があるかどうかを知らせるものです。

耳鼻咽喉科では、何を調べますか?
お子さまの耳の穴は狭く、じっとしているのも難しいため、耳の奥をきちんと見るには工夫が要ります。
当院では、耳鼻科用顕微鏡や耳用ファイバー(内視鏡)を使い、鼓膜の状態を拡大して確認しています。鼓膜の色や動き、奥に液体がたまっていないかを診ていきます。
あわせて、きこえの状態を調べる聴力検査や、鼻の奥の状態の確認を行うことがあります。滲出性中耳炎では、鼻やアデノイドの状態が背景にあることが多いためです。
耳垢が多くて鼓膜が見えない場合には、まず耳垢を除去してから確認します。耳垢の除去だけで終わらせず、その奥の状態まで診ることが大切です。
どのように対応していきますか?
滲出性中耳炎は、経過を見ながら対応していくことが多い病気です。自然に改善することもあれば、時間がかかることもあります。
対応の柱は、大きく次のとおりです。
- 背景にある鼻の状態を整える。アレルギー性鼻炎や副鼻腔炎がある場合は、そちらの治療を行います
- 定期的に鼓膜の状態を確認する。改善しているか、変化がないかを見ていきます
- 必要に応じて処置を検討する。長引く場合や、きこえへの影響が大きい場合には、鼓膜に小さなチューブを留置する方法が検討されることがあります
どの対応を選ぶかは、たまっている期間、きこえの程度、鼓膜の状態、お子さまの年齢などによって変わります。診察のうえでご相談しながら決めていきます。
なお、当院で対応が難しい場合には、連携している医療機関をご紹介しています。
よくあるご質問
Q. 痛がっていないのに、中耳炎ということがあるのですか。
A. あります。滲出性中耳炎は、鼓膜の奥に液体がたまっていても、痛みや発熱がほとんど出ないことが特徴です。そのため気づかれにくく、聞こえにくいまま過ごしてしまうことがあります。
Q. 放っておくと、どうなりますか。
A. 自然に改善することもありますが、長く続くと聞こえにくい状態が続き、言葉の聞き取りや学習に影響することがあります。また、鼓膜の状態に変化が出ることもあります。そのままにせず、経過を確認していくことが大切です。
Q. どれくらいの期間で改善しますか。
A. お子さまの状態や背景によって差があります。数週間で改善することもあれば、数か月にわたって経過を見ることもあります。期間を一律に申し上げることは難しいため、鼓膜の状態を確認しながら判断していきます。
Q. プールに入っても大丈夫ですか。
A. 状態によります。滲出性中耳炎そのものでは参加できることが多い一方、耳だれがある場合や鼓膜に穴がある場合などは控えていただくことがあります。病名だけで一律に判断できるものではありませんので、診察時にご相談ください。
Q. 鼻の治療をすると、耳もよくなるのですか。
A. 中耳と鼻の奥は耳管でつながっており、鼻の状態が耳に影響することがあります。そのため、アレルギー性鼻炎や副鼻腔炎がある場合には、そちらの治療も併せて行います。
Q. 何歳ごろから検査を受けられますか。
A. 鼓膜の観察は年齢を問わず行えます。聴力検査については、お子さまの年齢や理解度に応じて方法を選びます。まずはご相談ください。
まとめ:痛くない中耳炎があります
- 滲出性中耳炎は、鼓膜の奥に液体がたまり、音が伝わりにくくなる状態です
- 痛みや熱がほとんど出ないため、気づかれにくいという特徴があります
- お子さまの耳管は短く水平に近いため、鼻の状態の影響を受けやすいとされています
- 家庭で気づく手がかりは、聞き返しの増加、テレビの音量、呼びかけへの反応です
- 当院では顕微鏡や耳用ファイバーで鼓膜を拡大して確認し、必要に応じて聴力検査を行います
- 耳垢の除去だけで終わらせず、その奥の状態まで診ることが大切です
- 対応は経過を見ながら進めます。期間を一律に申し上げることは難しい病気です
「聞こえていないかもしれない」と感じたら、それは受診してよいサインです。勝どきみなみクリニック耳鼻咽喉科では、勝どき・晴海・月島をはじめとする周辺エリアのお子さまの耳の症状を診療しております。お気軽にご相談ください。
医療法人社団恵水会 勝どきみなみクリニック耳鼻咽喉科 院長
南 愼一
医学博士/耳鼻咽喉科学会認定専門医/耳鼻咽喉科学会認定補聴器相談医/身体障害者福祉法 第15条指定医
参考文献
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